– 針づくり100年のノウハウと想いを込めて –
従来の移植用注射器では生体組織などの軟質固形物の移植に用いようとした場合、移植片を針筒内に装填する作業が大変困難で、施術の安定性の観点からは現実的なものではありません。その様な背景から生体組織の移植には、主にメスやハサミ等によって切開する方法がとられ、極めて侵襲性の高い施術となるのが通例でした。「侵襲性、操作性、時間、コスト」それらの問題を一気に解決するべく「熊本大学の岡田教授」と同大学内に研究室を持つベンチャー企業「株式会社キュオールの刈谷博士」の発案により共同開発されたのがこの「Ez-Plant®」です。
九州オルガン針では、この開発コンセプトが企業理念にもマッチすることから、針づくり100年(グループ企業)に及ぶノウハウと想いを込めて開発に臨みました。
侵襲度軽減
従来から用いられてきた留置法とは異なる
●実験動物への福祉向上! ●切開を必要としない!
●麻酔を必要としない! ●クリップや縫合も不要!
操作性抜群
習熟不要で初心者でも操作可能
装填治具によって軟質な生体組織も簡単確実に装填可能で、移植プロセスは注射器の使用法と同じなため習熟を必要としません。
操作方法 – 実技動画
共同特許出願 Ez-Plant 発案者の声
当研究室では、超免疫不全マウスを用いてヒト化マウスやヒト腫瘍移植マウスモデルを作成し、ヒト腫瘍の病態解析に基づいた新たな治療法に取り組んでいます。マウスにヒト腫瘍を移植する際に麻酔と皮膚切開が必要なため、もうすこし簡単でマウスに苦痛の少ない方法で腫瘍の移植ができないか悩んでいましたところ、御社を御紹介いただきました。不勉強で熊本にこのような会社があるとは知りませんでしたが、工業用ミシン針のシェアは世界トップクラスで、比類ない金属加工技術を持っているというお話で楽しみにしておりましたところ、私たちの話を聞きに来てくださり、熱心に取り組んでくださいました。社長さんまで当研究室においでいただいたのは驚きました。
担当の城戸さんには試作品を作っては何度も何度も研究室に足を運んでいただきました。やわらかくて弾力のあるマウスの皮膚にスムーズに刺すことが必要ですので、針の先端の角度や長さを細かく変えて試作品を作り、実際にマウスの皮膚に刺して、その感触を確かめながら当科の刈谷助教と共に工夫を凝らしました。「此処はこうしたほうがいいのでは?」と言うと直ぐに改良版を作成していただきましたし、本当に楽しそうに開発に取り組んでいるところが印象的でした。そして、まさに「職人芸」の最適な移植針が完成し、 “Ez-Plant®”と名付けられました。デザインも素敵なものが出来上がりましたので、共同で特許と共に意匠登録の申請も致しました。共同研究では、九州オルガン針様の技術の高さと熱心さに心を打たれました。
“Ez-Plant®”は新たな医薬品の開発に大きな貢献をしてくれるものと期待しています。これからも九州オルガン針様とは、お互いの得意な分野を生かした医工連携・産学連携により、世の中の役に立つものづくりに励んでいきたいと考えています。今後ともよろしくお願い致します。
岡田 誠治
熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野
大学院医学教育部 造血・腫瘍制御学分野
Ez-Plant 共同研究者の声
共同研究に至るまでの経緯
これまでヒト腫瘍組織をマウスに移植する度、皮膚を切開していたのですが、麻酔が切れた後マウスは痛いだろうなといつも思っていました。もっと簡便に皮下移植を行えるデバイスが発売されないかと思っていた時、株式会社リバネス様から九州オルガン針様をご紹介いただき、「なければ作ればいい」と考えるようになりました。共同研究を通じて九州オルガン針様の技術力、製品に対する情熱を感じました。
この商品や研究への思い
医薬品の開発において、実験動物を用いた試験は避けては通れません。今回開発したEz-Plant®で、試験に用いるマウスが受ける苦痛を少しでも緩和できればと思っております。
今後この製品や共同研究においての期待・展望
多くの研究者の方にEz-Plant®を使用していただき、様々ながんに対する画期的な抗がん剤が開発されることを期待しています。今後も九州オルガン針様と、研究機材や医療機器の開発ができればと思っております。
株式会社キュオール 刈谷龍昇
熊本大学くまもと地方産業創生センターベンチャー支援室
九州オルガン針 設計開発者の声
共同研究に至るまでの経緯
㈱リバネス様経由で弊社営業課が㈱キュオール様を訪問し今回の製品開発についての情報を得る。その情報をもとに更に具体的なお話をするために製造課から早野部長、生産技術課からは私が同行し訪問させていただきました。その際に弊社の技術を活かせば熊本大学の岡田教授、㈱キュオールの刈谷社長がイメージしている機能の製品を生みだせるのではないかと感じたことが全ての始まりでした。
この商品や研究への思い
生体組織移植キットは九州オルガン針初の共同開発商品ということもあり日々トライアンドエラーを繰り返しながら開発しました。その中で特に操作性の向上と様々な質感の細胞を移植可能にする点に難儀しました。しかしこれらの課題をクリアできたのはこの製品の価値を大きく上げることに繋がり、これから多くの研究機関などに使用していただけるよう努めてまいります。
今後この製品や共同研究においての期待・展望
生体組織移植キットは㈱キュオール様を何度も訪問させていただき岡田教授、刈谷社長とともに少しずつ改良を重ね移植難易度が極力低くなるよう作製してまいりました。そのため移植の難易度や麻酔の設備導入等で移植を断念していた機関にも使用していただけるのではないのかと期待しております。
今後の共同研究に関しましても新たなニーズに対応する製品を弊社では共同で開発できると感じておりますので何卒よろしくお願い致します。